経営再建に取り組むセシールは、2012年度に売上高を6割増の1060億円、営業利益90億円をめざす中期経営計画「セシール・ルネサンス」の重点施策の一つに「四国戦略」を掲げた。
物流拠点を香川県に置くセシールは、瀬戸大橋を渡るコストが余計にかかる。おまけに四国の売上は3%強にすぎない。なぜ四国が重要なのか。なぜ四国戦略なのか。
昨年、セシールの代表取締役兼CEOに就任した上田昌孝さんは、少年期をイギリスで過ごし、外資系金融企業のトップを務めたダイレクトマーケティングのスペシャリストだ。
グローバル化だからこそ「地元に会社を存続させる」・・・四国戦略は、世界スタンダードの経営理念を越えた上田さんの”熱い思い“ だ。
※(ダイレクトマーケティング)
データベースを駆使しコストパフォーマンスを保ちながら顧客の便益と企業ブランドイメージを「伝えたいターゲット」にダイレクトに伝えること。「外資コンピュータメーカー」「外資生命保険」などが代表的で、電話、紙媒体、インターネットなどを駆使する。
会社を地元に存続させる仕組みを!
セシールは通販事業だから香川に居なくてもいい。「情報量が少ないし、物流で橋の経費が余分にかかります。アメリカ流の再建計画なら、香川から移転することに躊躇はしません」。しかし人材や物流機能は香川にある。移転すれば地元で働く社員の職場はなくなる。蓄積したノウハウも捨てることにもなる。おまけに志度ロジスティクスセンターの不動産価格が下落して売れる状況ではない…四国戦略は厳しい制約の中から出てきた選択だ。
地元に産業があるから地域経済は活性化する。経済合理性だけで会社がみんな東京に移ったら地域は衰退する。やがて国もだめになる。地元で会社が成り立つ仕組みができたら素晴らしい地域貢献になる。しかし四国戦略だけで会社がよくなるわけではない。「志度のセンターはそのまま残して、本州にも物流拠点を作れば、BCP的な要素も含めて経営の効率化が図れます」。四国の売り上げを5%に、10%に伸ばせると、セシールが香川に存続する価値がでる。
「地元企業にも志度を使ってもらって四国の物流効率が良くなると、あの場所が活きてきます」。会社と地域の現実を見据えた企業戦略だ。「高松で育った会社だから、地元に貢献できることを前提に再建計画を考える、これはもう論理ではないんです」。しかし高松にいても、情報収集力は東京と同じレベルでないと競争に負ける。「そういう意味で四国戦略は、社員に対する啓蒙活動でもあります」。
グローバル化に負けない地元が大切なのだ。経済も自然環境も同じだ。多様性こそ変化の落差に適応できる資源だろう。その思いが四国戦略だ。